米中戦争を考える?!!

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米中戦争は起こるのか?いろいろネットでも言われておりますが、この「けんけんしーま」としても、軍事ネタを扱うブログとして一応きちんと考察しておかなければと思い、今回は「米中戦争を考える?!!」で行きたいと思います。

出典:講談社現代新書

一応、参考書籍として渡部悦和著「米中戦争そのとき日本は」を読まさせて頂きました。東大出て、陸上自衛隊に入隊し、東部方面総監になって、今はハーバード大学アジアセンター主席研究員となられている方です。陸自の陸将ですが、本の表紙は戦闘機なんですね。

もうひとつ、YouTube動画によく出ている方で、用田和仁さんの動画です。用田「もちだ」さんは防衛大学から陸上自衛隊に入り、西部方面の総監をされていた方です。今は三菱重工業の顧問、日本安全保障戦略研究所上級研究員をされています。

台湾シナリオ

今、最も懸念されているのが台湾侵攻から米中の戦争になっていくシナリオ。1996年、台湾総統選で李登輝が有力とされたときに、威嚇の為、台湾近海に向けてミサイル発射を行った。訓練と称していたものの、民主選挙に対する中国の明らかな妨害、威嚇行為であることは明らかであった。それに対してアメリカは2ユニットの空母打撃群を派遣。米国への中国の恫喝を気にもせず、台湾海峡へ空母(ニミッツ、インディペンデンス)を展開させた。中国軍は、その米軍の素早い動きに手も足も出なかった。このとき中国は大変悔しい思いをし、(臥薪嘗胆ではないですが)25年の歳月を経て経済力をつけ、軍事力増強を図ってきました。あの当時雲泥の差があった米中の軍事力ですが、いまやかなりその差は縮まってきています。もちろん米国の方が現時点では、まだまだ上をいきますが、台湾は中国との距離も近いという中国優位の条件、中国のA2AD戦略も着実に進化していることを考えると、台湾防衛は大変な犠牲を伴うものと思われます。

中国と台湾の距離が近いということは、中国の戦闘機や爆撃機がひっきりなしに来ることを意味しています。また開戦当初、米軍は空母を第二列島線まで後退させるとしています。そこから、第一列島線内の中国艦艇に対して、巡航ミサイル、弾道ミサイル、攻撃型ドローン等で制海権、制空権確保を進めます。米中で考えた場合のこの距離が問題となってきます。中国軍はすぐに飛んで来れますが、米軍ではそうはいきません。この空母後退は、軍事に詳しい人なら当然と見ますが、一般の国民レベルでは「米軍が我々を見捨てて逃げた」と思いかねないほどの大変な衝撃をもった、同盟継続を左右しかねないほどのインパクトになります。

(出典:日本安全保障戦略研究所)

当然、沖縄の米軍基地を多数の戦闘機、爆撃機が利用します。そうすると、在日米軍基地も中国の目標になることが十分予想されます。一方米軍は、中国本土の航空基地を空爆するかと言うと、まだそこまでわかりません。中国本土への空爆は、米中による核戦争をも引き起こしかねないわけで、当然台湾と西太平洋その近海における局地戦争の範疇で抑えたいと両国とも思っているわけです。米本土、中国本土への攻撃は、両国トップによる覚悟、最重要意思決定であることは間違いありません。しかし、相手の航空基地を叩けば、それだけ自国の航空戦力の被害を抑えられるわけで、なるべく相手を怒らせず?制空権を確保するのは米軍と言えども大変なリスクを負います。

(出典:CSBA)

現代戦においては、5つの作戦領域が定義されています。陸、海、空、宇宙、サイバーの5つです。始まりはこの5つの作戦領域(ドメイン)における中国の先制攻撃から始まると言われます。サイバーで相手国:米国のインフラを狙い、宇宙では軍事衛星を無力化して連携を崩し、陸海空の作戦をくじきます。

中国は第一列島線内の制海、制空権を取るため、ミサイル、駆逐艦、航空機、機雷、ミサイル艇、潜水艦等で攻撃します。

(出典:CSBA)

次に中国軍は、台湾へ上陸となるのですが、中国海軍やロケット軍のミサイル攻撃は非常に脅威となりますが、潜水艦や対潜水艦作戦能力においては、日米の方が上をいきます。中国陸軍の輸送船等が台湾海峡を渡ろうとすれば、大半がアメリカの原子力潜水艦の餌食となります。たとえ、台湾へ上陸出来たとしても、台湾陸軍27万人が防備を固めているため、陣地を築くのさえ難しいと思われます。

日米と書いていますが、アメリカは日本が同盟国として一緒に戦うことを前提にしています。しかも在日米軍基地が攻撃されれば、いや応なしに出て行かざるを得ないでしょう。

対台湾ミサイルを中国は約1000発(弾道ミサイル880発、巡航ミサイル100発)保有しており、台湾のほぼすべての場所を攻撃できます。先制攻撃で主要な軍事施設はほぼ無力化されます。それを防ぐ為には、日本もですが、基地の迅速な修理、地下施設、掩体壕、分散配置等により、第一撃を受けてもまだ戦える状況を作っておかなくてはなりません。台湾防衛も、その第一撃から、兵力その他兵器等をどれだけ残せるかにかかっています。

米軍は、第二列島線から航空機、爆撃機、無人機、巡航ミサイルを使って敵艦船へ攻撃を加えます。第一列島線からは、駆逐艦、潜水艦からの攻撃、また第一列島線の島嶼部には、同盟国の軍隊と、米陸軍、米海兵隊が展開します。これらの島嶼部からも地対艦ミサイルで攻撃を行います。これは、中国のA2AD戦略を逆手に取ったアメリカとその同盟国による逆A2AD戦略と言うことも出来ます。第一列島線の島々に米同盟国は、地対艦ミサイル配備を進めるべきです。

米中の軍事費で見れば、アメリカの方がまだまだ多いですが、中国としては無理してアメリカに追いつく必要性はなく、第一列島線内という限られた域内で優勢を取れればいいという考えです。中国は短期高烈度の戦いを想定していますが、米軍としては、長期化の方が優位に働きます。いったん引いて、制空権、制海権を取ってから攻め込む作戦だからです。今現在では、アメリカに有利という分析が出ていますが、さらに5年、10年経てば米軍もかなり厳しくなるものと思われ、さらに15年、20年後では、膠着状態に向かう可能性もあります。日本としては、どういう立場が良いのか良くわかりませんが、しっかり考えていかなければならない問題です。

台湾が攻撃されれば、ネットを通じて全世界に情報が伝達されるでしょう。もちろん日本にも「助けて」と多くの人が訴えてくると思います。もし日本として何もしなければ、結果はどうであれ、多くの台湾人が反日になると思われます。

今回は台湾シナリオを見てきましたが、参考にした渡部悦和さんの「米中戦争そのとき日本は」ではこの他に3つのシナリオを載せています。「南沙諸島」「尖閣」「南西諸島」それぞれ違ったアプローチを取り、軍事力を使わずに、攻められていることすら分かりにくく、いつの間にか相手に有利な状況になっていたと言うことも想定されます。何もないに越したことはありませんが、そういう気を起こさせない為にも、平時からきちんとした準備が大切です。他のシナリオについては、また後日記事にしたいと思います。

戦争確率は?

戦争になる確率は、一体どのくらいなのでしょうか。1%未満?いやいや5%?え!もっと?30%!!!いやいや、最後に書籍にも書いてましたが、トゥキディデスの罠について書きたいと思います。覇権国家と新興国家が折り合えないまま戦争に至ってしまうことをトゥキディデスの罠と言います。現代の研究で過去500年間に覇権争いと思われる16件の内、戦争になったのは12件だったとのこと。そう考えると12/16=0.75!!!!  75%❗ すごすぎますね。このトゥキディデスは古代アテナイの歴史家です。この時の覇権国家はあのスパルタです。超スパルタ軍事教育の国です。強すぎて誰も逆らえなかった。一方自由な風潮のアテナイは経済大国として力をつけていく。今まで一番だったスパルタとしては、伸びてくるアテナイの存在が邪魔になってくるわけです。そして27年に渡るペロポネソス戦争に突入していくわけです。ケンカする両者は頭に血がのぼって正常な判断が失われます。防げる確率は、この理論を元にすれば25%です。今この時代に生きているすべての人は、この25%にすがるのではなく、自らが動き、両者を諌め、仲裁し、平和を作り上げて行くことが求められます。

(参照:ウィキペディア、AFP、米中戦争そのとき日本は、未来編集、日本安全保障戦略研究所、その他)

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