最新鋭潜水艦とうりゅう進水
2019年11月6日神戸市川崎重工業神戸工場で最新鋭潜水艦とうりゅうの進水式が行われた。「そうりゅう型」潜水艦の12番艦。今後、装備の取り付け、試験航行を経て2021年3月就役予定。基準排水量2950t、全長84m、全幅9.1mでディーゼル型潜水艦としては世界最大となる。乗員65名、最大水中速力20ノット、建造費690億円。リチウムイオン電池搭載。
リチウムイオン電池というと、先日2019年ノーベル化学賞が決まった旭化成の吉野彰さんが研究開発したとして話題になりましたが、今ではスマホから電気自動車まであらゆる電子機器に搭載されており、現代の生活には、なくてはならないものとなっています。そのリチウムイオン電池が最新鋭潜水艦「とうりゅう」に搭載されているわけです。もう「スマホから潜水艦まで」ですね。起工が2017年1月で進水が2019年11月で、竣工が2021年3月とのことです。本体が約3年かかり、それから1年少しかけて装備の取り付けや試験航行となり、就役となります。
潜水艦の種類
現在潜水艦は大きく分けてディーゼル型(通常型)と原子力型の2種類あり、日本は原子力潜水艦を持っていません。ディーゼル型は燃料として軽油、重油を用い、発電機を動かして発電し、バッテリーに蓄電する。その電力を使って水中を航行するのである。当然ディーゼルエンジンを動かすときは、潜れません。燃料を燃焼させるために大量の空気が必要になるからです。ディーゼルエンジンを停止させてから、バッテリーに蓄電した電力を使って、電動機を回しスクリューを回転させます。そのバッテリー、今までは鉛蓄電池が使われていましたが、そうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」(2018年11月進水)でリチウムイオン型バッテリーが世界で初めて採用され、巡航速度、航続距離、潜水時間などが大幅にアップしました。今後世界の軍用車両等に広がっていくものと思われます。
ディーゼル型は原子力型より能力が劣ると思われている方もいると思いますが、どちらも長所短所を持っています。日本のディーゼル型潜水艦は静粛性が高く、一度潜航してしまえば、非常に見つけずらいとされます。相手がどこにいるかもわからない状況で、その海域に踏み込んでくるのは相当な勇気がいります。日本は専守防衛を掲げていますので、日本の周辺海域のみを警戒すればいいので、日本近海に静かに潜水艦を潜ませておくだけで、相手はものすごく脅威に感じるわけです。だから日本はディーゼル型が適しているといえます。一方、原子力型はサイズも大きくなり、製造コストも非常に高く、廃棄の際の核廃棄物の問題も出てきます。なにより、潜水艦として非常に大事な静粛性が悪いです。原子力で蒸気を発生させてタービンを回し減速機を伝ってスクリューを回す過程で大きな音を発生させます。また原子炉の冷却のためのポンプも音を発生させます。静粛性が命の潜水艦にとって、ここにいますよと言いながら海の中に潜んでいるようなものです。ただ核燃料なので、半永久的に動き続けることができ、その有り余るエネルギーで、海水から水を作り、電気分解して酸素まで作りだせるわけで、長期間、広い艦内で比較的快適に過ごせる利点があります。それゆえ、原子力潜水艦は、本国から遠く離れて長期間活動する場合には、有利です。どちらにしても長所短所があり、今後日本でも原子力潜水艦の保有が議論されることもあるかもしれませんが、費用が大変高額(通常型の5~10倍)であり、核の平和利用から外れるため、今はまだ通常型を進化させた方が良いかもしれません。今後コストが下がり、静粛性の問題が解決していけば、原子力潜水艦が主流となるでしょう。
原子力潜水艦は現在、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インドの6か国が保有しています。原子力エネルギーの為、半永久的に動き続けることが出来るといって過言ではありません。乗員の食料や水の補給はありますが・・・燃料の心配はいらないので、海水から真水を作ったり、さらに電気分解で酸素を作ったりでき、ずっと潜っていられるわけです。
イギリス海軍
アスチュート級原子力潜水艦:2010年就航、イギリス最新鋭潜水艦、排水量7800t、全長97m、速力30kn(56㎞/h)、運用深度300m以上、乗員108名、兵装533㎜魚雷発射管6、トマホーク巡航ミサイル、ハープーンミサイル、スピアフィッシュ、機雷
アメリカ海軍
バージニア級原子力潜水艦:2004年就役、排水量7800t、全長115m、速力25kn、運用深度488m、乗員134名、兵装533m魚雷発射管4、トマホーク用VLS12基
シーウルフ級原子力潜水艦:1997年就役、アメリカが誇る世界最強と言われる潜水艦です。排水量9150t、全長108m、速力35kn、運用深度610m、乗員133名、兵装660㎜魚雷発射管8基、トマホークSLCM
戦略型原子力潜水艦
原子力潜水艦は攻撃型と戦略型の2種類があり、攻撃型というのは通常の戦闘を行う原子力潜水艦のことです。上記の説明は攻撃型です。もう一方、戦略型原潜というのがあり、攻撃型に比べかなり大きい潜水艦となります。通常型、攻撃型原潜と何が違うのかというと、SLBMを搭載できるかということです。SLBMとは潜水艦発射型のミサイルのことで、主に核兵器を指します。万一の際は、敵国周辺で浮上もしくは海面近くでこのSLBMを発射することになります。万一核戦争が起これば、地上のサイロや基地は60~90分以内に90%以上壊滅すると言われますが、この戦略原潜は海深く潜っていれば、ほぼわかりません。この原潜が一隻でも残っていれば、相手に壊滅的な打撃を与えることが出来ることになります。アメリカのオハイオ級原子力潜水艦では、全長170m、排水量18750t(水中)、速力20ノット、乗員155名で、SLBMを24基装備しています。さらにその1つのSLBMに最大8つの核弾頭をセットでき、一隻残せば国が亡びるのもうなずけます。
現在の世界の潜水艦保有数
米国 70隻(全て原潜、ロサンゼルス級、バージニア級、シーウルフ級など)
中国 69隻(新旧合わせて)(晋級、商級、キロ級、元級など)
露国 61隻(デルタ型、ヤーセン型、シエラ型など)
日本 21隻(おやしお型、そうりゅう型)
日本の潜水艦「おやしお型」
基準排水量 2750t
寸法 長さ82m 幅8.9m 深さ10.3m 喫水7.4m
主機械 ディーゼル2基 メインモーター2基 1軸
馬力 7750PS
速力 約20ノット
兵装 水中発射管一式、シュノーケル
乗員 70名
SS592うずしお、SS593まきしお、SS594いそしお、SS595なるしお、SS596くろしお、SS597たかしお、SS598やえしお、SS599せとしお、SS600もちしお(9隻)
日本の潜水艦「そうりゅう型」
基準排水量 2950t
寸法 長さ84m、幅9.1m、深さ10.3m、喫水8.5m
主機械 ディーゼル2基、スターリング機関4基(10番艦まで)、推進電動機1基
馬力 8000PS
兵装 水中発射管一式、シュノーケル
乗員 65名
速力 水上13ノット(24㎞/h)水中20ノット(37㎞/h)
SS501そうりゅう、SS502うんりゅう、SS503はくりゅう、SS504けんりゅう、SS505ずいりゅう、SS506こくりゅう、SS507じんりゅう、SS508せきりゅう、SS509せいりゅう、SS510しょうりゅう、SS511おうりゅう、SS512とうりゅう(12隻)
今回新たに進水したのがSS512のとうりゅうで、SS511おうりゅうと合わせて2艦がリチウム電池搭載となります。
(出典:海上自衛隊、ウィキペディア、NEWSWEE、乗り物ニュース、他)