尖閣紛争と政治判断、南西諸島シナリオを調べて見た。

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「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」を読んでみました。陸海空の軍事戦略エキスパート3名による共著です。2014年に発刊されたものですが、基本的な動きはそんなに変わらないでしょう。尖閣というと日本をめぐる最も懸念すべき問題の一つです。万一という事態は絶対に防がなくてはなりませんが、それでも、どうしても駄目な場合に備えて、準備を万全にし、訓練を繰り返し、シミュレーションしておく事は重要な事だと考えます。以前記事にした渡部悦和さんの「米中戦争そのとき日本は」も参考にしながら書きたいと思います。

1996年の台湾海峡危機では中国は米国に対して、米西海岸へ核兵器を打つと脅したが、その脅しをものともせず、米空母機動部隊2ユニットを台湾海峡へ即座に派遣した。それで中国は黙らざるを得なかった。あれから20年、悔しさをバネに中国は目覚ましい発展を遂げ、世界第二位の経済大国となった。軍事力も当時の中国とは比較にならないほど増大し近代化も進んだ。

※この時1996年、中国は米西海岸へ核兵器を打つぞと脅したにも関わらず、米国は空母打撃群2ユニットを派遣したわけですが、当時の米政権は西海岸を引き換えにしても米国の力を見せることを優先させたと言えないでしょうか。それとも絶対に中国は打たないという確証があったのでしょうか。この判断は核戦略における最も重要な部分であり、軍事的な戦略を超えた米国大統領による覚悟、最高意思決定となります。この辺の詳細は分かり次第また記事にしたいと思います。ただタカを括っただけの稚拙な判断で無いことは信じたいですね。どちらにしろ命を掛けた米国の行動に台湾の人は大変感謝した事でしょう。

米中間でいままで色々と問題抱えてきましたが、一方日本はと言うともちろん尖閣諸島における問題があります。日本と米国は同盟関係にあります。まだ20年前なら米国も無条件で援軍を送ってくれたでしょうが、今はどうなのでしょうか。現在米国は尖閣問題に関し、日米安保5条適用を明言してくれています。しかし施政下における領域に対する攻撃に関してです。この施政下というのが曲者で、施政権をいかに取るかという中国側の戦略に対して日本の海上保安庁が必死に対応しています。なぜ中国がいきなり攻撃してこないかというと勿論日米同盟があるからで、中国としては施政権を行使し、ここは中国の領海ですよと内外に示す、特に米国に言うことで、日米安保の適用外となるように持っていきたいわけです。いかに米国を参入させないかと言うのが、中国に取って最も重要な部分です。漁船を送り込んだり、逆に日本の船を取り締まったりすることで、施政権を示します。どういった形で戦闘にエスカレートするかは、専門家によって様々です。よく言われるのが何百という漁船に混じって偽装漁民:民兵が上陸するシナリオ。海上保安庁も放水や進路妨害等を行いますが、何百という船が来れば当然抑えきれません。機銃による威嚇射撃もあるかも知れません。中国海警局は体当たり攻撃用に船首が補強されており、現場は当然大混乱となります。そこで自衛隊がでれば、もちろん中国海軍が出てきます。出す出さないの判断は政府による高度な政治判断となります。

勿論、取られてから、相手が守りを固めてからの奪還というのは大変難しく、相当な犠牲が伴うものと思われます。奪還作戦を行うかどうかは、政府と国民による強い意思によるところが大きいでしょう。もう駄目だ、無理だ、やめようと思うのも選択肢の一つですが、元陸上自衛隊西部方面総監の用田さんによると、尖閣が取られたら、中国海軍は自由に太平洋へ出れるようになり、米軍は西太平洋から追い出され、日本は東京、大阪、名古屋など大都市が太平洋側から中国海軍に狙われ、大陸側からは、弾道ミサイルで狙われ降伏せざるを得なくなる。日本が落ちれば、台湾、ベトナム、フィリピン、東南アジア、第一列島線沿いの国々は落ちざるを得ない。これらの国々が中国側に付き、中国を守るように第一列島線沿いの国々が東からくる米国と戦わされる形になる可能性、日米戦の可能性に言及している。

それを考えれば、米国も尖閣奪還作戦にかなりの援軍を出してくれると思うのですが、ネット上では米軍は一切協力しないのではと懐疑的な見方もかなりある。米国の政治家は他の同盟国の目もあるので、安保適用範囲内ですと強い口調で言ってくれますが、実際ランド研究所の尖閣紛争に関する報告では、戦闘が開始され数日で海上自衛隊の2割が死傷すること、またあまりにも被害が大きくなりすぎるので、米軍は限定的な援軍のみで深入りすべきでないと言っています。ランド研究所の報告も大変重く受け取らなくてはいけませんが、最後、出す出さないの判断は米国政府と米国民の意思と言わざるを得ません。

奪還作戦をしないで済むならそれが一番ですが今、海上保安庁の巡視船が日夜問わず全力で対応しています。万が一という事は例え嫌であっても想定しておかなくてはなりません。どんな想定になるかわかりませんが、ここからは武力紛争開始から日米共同軍事作戦のシナリオです。

武力紛争シナリオ

出典:ニッポン放送

小競り合いが続いて、睨み合いが続いて、ある時いきなり開始されます。

中国戦略ロケット軍が、南西諸島の自衛隊基地に対して弾道ミサイル、巡航ミサイルの発射。爆撃機、戦闘爆撃機による空爆の実施。中国軍の尖閣上陸作戦開始。同時に心理戦宣伝戦、テロ、サイバー攻撃、電子戦を実施。外交活動の活発化。

日本政府は民間機の飛行禁止空域を設定、南西地域全域が自衛隊作戦地域として指定される。防衛出動を下令、国家非常事態宣言。島民の避難、保護を開始。

両国とも総力戦を避けようと、限定的な戦いになる。中国は米軍を参戦させないように米軍基地への攻撃は避け、米国世論を操作しようとする。逆に日本は米軍に支援を求める。当然米国の同盟国は固唾を飲んで米国の動きに注視するわけです。

出典:のりものニュース

戦闘海域では多くの対艦、対空、対地ミサイルが飛び交う。

中国海軍は南西諸島へ陸上部隊の輸送を開始。護衛艦艇と海上自衛隊艦艇が戦闘。海上自衛隊は潜水艦、哨戒機、偵察機等の哨戒活動で敵の早期発見に努める。敵兵員の輸送船、その護衛艦を撃破しつつ、敵潜水艦の発見には全力を持って対応しなければならない。また中国軍の接近上陸を阻止するため、掃海母艦、潜水艦、航空機などにより、主要海域に機雷敷設、また島の上陸適地の沿岸部に水際地雷埋設。

空において、中国側は空警2000、空警200、空中空輸機、Su27、Su30などの戦闘機、H6爆撃機、J10 戦闘爆撃機が作戦行動を行う。日本側は空中指揮管制機E767AWACS、F15J、F2、空中給油機等が作戦を行う。

弾道ミサイル発射を米国の早期警戒衛星、イージス艦で捕捉し探知。イージス艦のSM3、嘉手納基地のパトリオットミサイルPAC3で迎撃。

出典:JapaneseClass

中国強襲揚陸艦による上陸、空挺部隊、へリボン作戦により、尖閣のみならず、宮古島、石垣島、西表島に最大2万の兵力を上陸させる作戦を開始。航空自衛隊は、上空でその輸送を阻止、陸上自衛隊は予想着上陸地点にて対空、対艦ミサイル等の火力を集中させ撃破する。

中国軍の尖閣上陸が成功する。中国軍は島に陣地構築。海自護衛艦、海自潜水艦は尖閣への増援部隊の上陸を阻止し、島を孤立させるように封鎖作戦実施。尖閣周辺の機雷設置を検討

日米共同の奪還作戦開始

米軍の参戦が確定すると、中国軍による米軍基地、米艦船へのミサイル攻撃が始まる。米本土も国防省を中核に防衛体制を取ります。

出典:防衛省

陸上自衛隊のへリボン作戦の実施。海自輸送艦による尖閣逆上陸作戦実施。同時に日米共同で中国国内のミサイル基地へ策源地攻撃を行う(ミサイルや戦闘機等)

米軍はミサイル攻撃、航空攻撃などの支援を行ってくれますが、やはり尖閣上陸作戦は自衛隊単独となります。

米軍参戦初期は米空母は中国の対艦ミサイルの射程外、ハワイまで引き下がる。しかしミサイル攻撃や航空機による敵基地攻撃で中国の対艦弾道ミサイルが無力化されると、米空母は作戦可能な海域まで前進配備されます。この際、海自の潜水艦、護衛艦は米空母の護衛、対潜作戦を共同で行う。

米軍はF22、F35、FA18、F15、F16などの戦闘機を投入。尖閣周辺の制空権を奪取。中国本土の敵基地攻撃を巡航ミサイル、航空機等で行う(敵防空網制圧SEAD)。MQ4、MQ9等の無人機でピンポイント攻撃。日米共同統合航空作戦による中国軍尖閣上陸部隊への攻撃。

出典:在日米海軍司令部

自衛隊の上陸部隊による尖閣奪還成功。

米国が参戦するかどうかで、大きく情勢は変化します。米軍が参戦すれば、攻撃力が格段に違います。中国の国力が大きく低下し、再侵攻の可能性は低下します。

あとがき

戦争が起こるのではと心配しすぎる事はありません。まだまだ米軍の力は強く、世界最強であることに変わりありません。日米の連携がきちんと取れて入れば、油断は禁物ですが、そう安安と仕掛けることは無いと思います。軍事の専門家は万一に備えて準備し、いろいろと考えを巡らせるのが仕事で所詮シナリオはシナリオでそのとおりに行かないのが常です。不用意に恐れるのは意味の無いことです。危機回避の為しっかり日本政府に外交をやっていただき、自衛隊は訓練をつみ、民間レベルでは交流を行うというのが大切だと思います。民主化が進めばいいんでしょうが。

一応関係ありませんが、世界一好きな料理はチャーハンと餃子と杏仁豆腐です。

参考出典: 自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか、米中戦争そのとき日本は

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