空母保有国はアメリカをはじめ、ロシア、中国、インド、イギリス、フランス、スペイン、ブラジル、タイとなっています。空母の運用には大変お金がかかる為、新規建造を断念したり、古い型を改造したりして各国苦労しています。その中でもやはり断トツで予算を割いているのがアメリカです。40年ぶり(新級)の最新鋭空母が2017年に就役した「ジェラルド・R・フォード」です。
最新鋭米空母「ジェラルドRフォード」
排水量 10万t 全長 333m 最大幅 78m
原子炉2基搭載、速力30㏏(57㎞/h)、乗員4600名、搭載機75機、建造費129億ドル(1兆4000億円)

電磁式カタパルトを搭載、2017年就役、電磁カタパルトはこのジェラルドRフォードが初の搭載艦となる。この艦が米空母11番目となる。母港はノーフォーク海軍基地。前級はニミッツ級空母。1~10番目まではニミッツ級である。この級名というのがフルモデルチェンジのような感じかな???それでマイナーチェンジを行いながら数十年かけて10番艦(ニミッツ級の場合)まで建造していくような感じです・・・。で、新たに2017年に新しくジェラルドRフォード級の一番艦「ジェラルドRフォード」が就役したわけです。艦級と艦名が一番艦は同じなのでちょっと困惑しますが、今から数年おきに2番艦、3番艦と建造されて行き、前級のニミッツ級の古い空母から退役していくものと思われます。
電磁式カタパルトとは、このジェラルドRフォードが初搭載となります。リニアモーターの原理で、世界初です。今までの空母のカタパルトは蒸気式で、一機上げるだけで、時間も手間も非常にかかっていたのですが、今回の電磁式は機体の重量による調整もすぐに行え手間もかからない為、連続して搭載機を短時間に上げられます。太平洋戦争時ミッドウェー海戦で日本の空母から飛行機を上げる前に米軍機に撃沈されたことを考えると、いかに素早く上げられるかは、空母にとって非常に重要な要素になります。しかしこの空母、カタパルトだけでなく様々な最新技術が投入されて、建造費がうなぎ上りの1兆4000億円となっています。2番艦、3番艦と徐々に建造費は下がると思われますが、それにしても破格の値段です。空母の寿命は約40~50年と言われ、その間の修繕費も相当なものです。しかしコンピュータ化、機械化などで従来の空母に比べ、運用の為の人員が抑えられており、人件費は大きく減るものと思われます。

現在活動中の世界の空母21隻
アメリカ11隻:
ジョージHWブッシュ、ロナルドレーガン、ハリーSトルーマン、ジョンCステニス、ジョージワシントン、エイブラハムリンカーン、セオドアルーズベルト、カールビンソン、ドワイトDアイゼンハワー、ニミッツ、ジェラルドRフォード
ロシア:アドミラルクズネツォフ
イタリア:カヴール、ジュゼッペガリバルディ
フランス:シャルルドゴール
ブラジル:サンパウロ
タイ:チャクリナルエベト
イギリス:クイーンエリザベス
インド:ヴィクラマーディティヤ
中国:遼寧(2隻建造中)
原子力機関を持っているのは、アメリカのニミッツ級10隻とジェラルドRフォード1隻、フランスのシャルルドゴールとなります。原子力機関を持つと、船体が大きくならざるを得ないのですが、ほぼ空母自体の燃料の心配はいりません。
空母打撃群について
空母打撃群というのは、要は空母自体は守りが薄く、敵の攻撃に非常にもろいため、空母を中心に巡洋艦、駆逐艦、ミサイル艇、潜水艦などで守りを固める。それら全体で作戦行動を行う。その構成は作戦や艦隊の能力、時代とともに変わってきています。
- 原子力空母(大型空母):ニミッツ級 1隻
- ミサイル巡洋艦: タイコンデルガ級1~2隻
- ミサイル駆逐艦:2~4隻
- 攻撃型原子力潜水艦:2~3隻
- 補給艦(戦闘支援艦):1隻

↑上記の写真は空母を守るように、軍艦が配置されていますが、実際の作戦ではこのように密接して動くことはありません。通常は核攻撃を受けても全滅しないように各艦数キロづつ距離を取って航行します。当然、水中には原潜が警戒しています。この写真は写真撮影用、メディア用と考えた方が良いでしょう。
空母で乗員5000名、周囲の巡洋艦、駆逐艦、潜水艦等の人員を合わせると7000名を超える部隊となります。空母はもうほぼ海に浮かぶ航空基地であり、アメリカの象徴であり、アメリカそのものです。決して沈められるわけにはいかず、各艦艇による警戒監視の中で運用されています。万一の場合はアメリカは全力を持って対応することになります。
米空母とその母港、横須賀!?
- ジェラルドRフォード:ノーフォーク海軍基地
- ジェラルドHWブッシュ:ノーフォーク海軍基地
- ロナルドレーガン:横須賀海軍基地
- ハリーSトルーマン:ノーフォーク海軍基地
- ジョンCステニス:キトサップ海軍基地
- ジョージワシントン:ノーフォーク海軍基地
- エイブラハムリンカーン:ノーフォーク海軍基地
- セオドアルーズベルト:ノースアイランド海軍航空基地
- カールビンソン:ノースアイランド海軍航空基地
- ドワイトDアイゼンハワー:ノーフォーク海軍基地
- ニミッツ:キトサップ海軍基地
(↑新しい順:上が新しい、下が古い)

母港がアメリカなのは当たり前として、ロナルドレーガンのみ日本の横須賀が母港。横須賀は整備のための施設が非常に大きく充実している。アメリカ海軍の太平洋艦隊(司令部ホノルル)には、東太平洋を管轄する第3艦隊と西太平洋を管轄する第7艦隊があり、その第7艦隊の基地が横須賀にあり、その第7艦隊の空母が現在、ロナルドレーガンになります。
空母打撃群の役割と今後
空母打撃群の役割は、敵国近海で制空権を取り、航空機やミサイルで内陸部にある敵基地へ攻撃することにあります。アメリカは良く政治的にも利用し、問題を抱えている地域に空母打撃群を派遣し相手国を威圧します。最近では北朝鮮の核やミサイルの問題で、周辺に空母2隻展開させたり、イランとの問題で、米空母をペルシャ湾へ展開させたりしている。今イランとアメリカの関係は非常に危ない状態にありますが、北朝鮮やイランを見てみますと、相手を威圧、けん制するための道具として、空母は以前ほどの力をもってないかもしれません。その割にコストが莫大かかり、維持整備補修等で動けない期間も長い為、アメリカとしては頭の痛い所です。
第一次世界大戦までは戦艦による撃ち合いがメインで制海権をいかに取るかが、勝敗に大きく影響していましたが、それ以降は戦闘機の発達により、いかに制空権を取るかが勝敗のカギになってきました。ミッドウェーで日本に大勝してアメリカは自信をつけ、空母中心主義に突き進んでいきます。絶対に沈めさせるわけにはいかず、周りを巡洋艦等でガチガチに固めなければ運用できないわけですが、現在、中国やロシアなどは、中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発や配備を進めており、特に中国は制空権を取られる以前に、近づかせないという戦略を取ろうとしています。アメリカは、それらのミサイルを迎撃する対空ミサイルの開発に力を入れていますが、超音速で飛んでくるミサイルを撃ち落とすのと、ゆっくり動く大きな空母を狙うのと、どちらが簡単か一目瞭然です。技術の難しさはそのまま、コストに跳ね返ります。時代と共に戦い方は変化します。限られた予算の中、どう進めるべきか、超高額な空母の運用も含め、慎重に検討していくことが求められます。
空母打撃群1ユニットの取得金額は最低2.5兆円、年間の維持費は1100億円と言われています。その空母打撃群を現在、アメリカは11ユニットを抱えているわけです。計画ではジェラルドRフォード級を今後10隻増やし、前級のニミッツ級を2隻残し、全部で13ユニットにするそうです。
今後戦場は陸海空だけでなく、サイバー空間、宇宙空間にも広がりを見せており、さらにはドローンやロボット、AIなどの軍事利用に各国開発競争にしのぎを削っています。米国も考えてはいるでしょうが、このまま空母中心主義でいいのか、超高額なだけに心配な所です。
(参照:ウィキペディア、ヤフーニュース、Globe、他)